2018年3月28日(木)、30名の方にお集まりいただき「Social Value Assurance取得 SROIレポート報告会」を開催しました。
【日時】2018年3月28日(水)午前10時~12時
【場所】中央区立環境情報センター
【主催】パナソニック株式会社 公益財団法人パブリックリソース財団
【プログラム】
1、パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化部部長 福田里香様 ごあいさつ
2、公益財団法人パブリックリソース財団 事務局長 田口 由紀絵 より Social Value International Assurance(認証)取得 SROIレポート報告
3、ディスカッション
[コーディネーター] 公益財団パブリックリソース財団 専務理事 岸本 幸子 [コメンテーター] 武蔵大学 社会学部メディア社会学科 教授 粉川一郎 氏 (Panasonic NPOサポート ファンド 環境分野審査員)
【内容のご報告】
SROIレポート報告(田口)
こちらの資料(PDF)をご覧ください。
報告書とインパクトマップはこちらのページからご参照ください。
コメンテーター(粉川氏)コメント
今回のSROIは、ステークホルダーの特定、絞り込み、ヒアリングやアンケートを組み合わせた情報収集など、とても丁寧に行われていると思いました。特に、ステークホルダーの関与や、重要なものは何か、というところを丁寧にやっているのがポイントだと思います。
「最初に提出したインパクトマップ」で指摘されている事項は、これまで国内で行われてきたSROIではあまり意識されていなかったことです。例えば、入院を必要とするアレルギー事故が減った、というアウトカムを、親にとってではなく、子どもにとっての価値としてつけるのだという指摘がありました。国内ではこれはあまり意識されていなくて、親なのか子なのか、どちらに付くアウトカムなのかは、インパクトマップづくりのときにあまり真剣に議論されてこなかったと思います。こうした指摘をもらって整理できたというのは、認証を得た価値としては大きいもので、今後のインパクトマップづくりにおける大きなメッセージになったと思います。
サポートファンドの380万円に対するインパクトの根拠となるデータとしては、「同ファンドによる助成金がなかったら、赤字事業だったので続けることができなかったと思う」という副理事長さんのコメントが大きかったと思います。インプットを正当化する一番のポイントで、それを裏付ける資料として診断シートが活用されていました。今回の分母分子の関係がきちんと整理されたというふうに理解ができました。
コーディネーター(岸本)コメント
組織基盤強化の社会的成果をはかるために、今回評価全体を2段階にするという手法を創りました。最初にマネジメントシートで変化を測り、変化によって事業化に成功したという言質をとり、その事業のインパクトを測り、ほかの寄与率を差し引いた、というやり方になっています。今まで測れないと言われていた組織基盤強化の成果評価を行う方法がひとつできたと考えております。この枠組みは、SROIネットワークジャパンの伊藤健さんから、「2段階評価のロジックでいけるんじゃないか」というご示唆を頂いたことが基礎となっています。認証を取ったことで、今後、組織基盤強化の成果評価に活用して頂けるのではと考えております。
会場からの質問と回答
Q SROIは団体のモチベーションにどう役立つのだろうか。
A 受益者の満足度調査は行っていても、最終受益者の変化(アウトカム)をデータを用いて把握するということはこういう機会がないとなかなかできないのでは。インタビューやアンケートなどをもとにアウトカムを把握することは、団体のモチベーションのアップやプロジェクトの改善につながると思う。
また、ステークホルダーがインタビューに答えるというプロセス自体が、自身も価値に気づきエンパワーされるプロセスになると思った。
団体にSROIの結果のフィードバックをすることで、どこに価値が生まれているのかをあらためて確認でき、事業の戦略づくりにも役立つと思う。
Q ヒアリングやアンケートはどのように設計したのか。特徴的だった点は何か。
A まずヒアリングを行って、そこで聞いたことをもとにアンケート票の項目や選択肢をつくった。「アレルギー大学の価値はいくらくらいか」と聞くと「プライスレス」という答えが来たりするので、設問や選択肢の作り方に工夫が必要だった。
また、ヒアリングの中から金銭プロキシのヒントを得たりした。例えば副理事長さんはアレルギー専門の医師なので、アレルギー事故が起きて入院となるとたいてい1泊2日になるとか、その場合の費用はいくらくらいとか、ヒアリングの中でうかがうことができた。ちなみに金銭プロキシは、どこかにリストがあってそこから拾えるということではなく、ステークホルダーの関与を得ながら設定していった。
SROIの原則では、ステークホルダーの関与をものすごく重要視している。実は最初に申請した時は、ステークホルダーの関与が足りずに認証が取れなかった。5週間の修正期間はあったが、アンケートを取り直すとなると期間が足りなかったので、あらためて調査をやりなおし申請しなおしたという経緯がある。
Q アンケートなどのデータはどれくらいとればOKなのか。
A SROIの認証を取るにあたっては、もし十分なデータが取れないのであれば、なぜ取れないのかを合理的に説明できればよいとされている。実際に、今回の重要なステークホルダーには子どもも含まれていたが、子どもにはアンケートなどで変化について聞くのが難しいので、親に代弁をしてもらった。そのこともSROIレポートの中に明記している。
Q 精神的負担の軽減の価値がいくらに相当するか、アンケートで聞いたときの選択肢は適切だったか
A 結果的に10万円未満と答えた人がとても多かったので、選択肢のレンジをどうするかや、そもそも金額を直接答えてもらうかについては次回の検討事項。
Q Social Value Internationalの認証の範囲は?
A 「原則」に沿っているかどうかは厳しく見られるが、最後に記載している「提言」の内容が適切かとか、データの分析の精度についての判断は含まれていないと理解している。
※アンケートへの回答より(一部抜粋)
「組織基盤強化の社会的インパクト評価」について
非常に重要だと思いました。具体的な組織基盤強化の内容、それによるインパクトも見えるようになるといいなと思いました。
組織基盤強化のための取り組みそのものが大変重要であり、貴重なものであると思います。その社会的インパクト評価に取り組まれたことは非常にチャレンジングであったと思いますが、意義深いものだと思います。ぜひ、説明責任のみならず学習と改善のためにも継続して社会的インパクト評価を取り組んでいっていただきたいです。
今回この様な形で組織基盤強化のインパクトが可視化され、そのご苦労ははかりしてないですが、とてもソーシャルセクターにとって価値のあるものが生み出されたのではないかと思います。
今回の調査は事業後に過去をさかのぼって行われたものでしたが、これを事業計画時そして事業を実際行っているときに行うものとした時に、今回の結果やプロセスからの学びからどんなことに気をつけるべきなのかといった知見をまた共有していただけたらと思いました。本当にありがとうございました。
組織基盤強化と社会的評価の2段階にわけたこと。Stakeholdersをしっかりと定義し、範囲を厳格に定めて計算したところがよかったし参考になった。
評価したことの第三者機関による認証制度を早く日本でも確立してほしいです。
アンケートの集計結果(全体)はこちらをご覧ください。
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