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「未来につなぐふるさと基金」
浦の川流域をひとまとまりにして「小網代の森」を保全
「NPO法人 小網代野外活動調整会議」視察会

「未来につなぐふるさと基金」では、2018年度報告会・意見交換会を行った翌日の2019年3月8日、協働団体の一つである「NPO法人 小網代野外活動調整会議」の視察会を行いました。その様子をお伝えします。

森と湿原と干潟と海がセットの珍しい生態系
流域思考に基づき、70haを保全

朝9時半、「未来につなぐふるさと基金」の助成団体に所属する10人が京浜急行・三崎口駅前に集合しました。この日の天気は前日の雨が嘘のような快晴で、駅前の河津桜は満開を過ぎて散り始めていました。そこからバスで5分ほどかけて、活動フィールドである「小網代の森」に向かいました。

「引橋」というバス停で下車し、市街地を抜けてすぐの「小網代の森」へ。初めに、代表で慶應義塾大学名誉教授の岸由二さんより、この場所の地形と保全されるようになった経緯について説明がありました。

「ここは、長さ約1200mの浦の川流域全体が市街地や道路で寸断されることなく自然の干潟までつながっている、森と湿原と干潟と海がセットになった珍しい生態系です。私たちは1983年から地域で活動を始め、現在は流域をひとまとまりに考える流域思考に基づいて、この場所を保全しています。

もともと京浜急行が鉄道・道路・住宅・ゴルフ場の開発を計画していた場所でしたが、私たちはゴルフ場をやめて、利用を前提とした自然保全地域として守ることを提案。市民活動が根づき、今後の活用が期待できるということで、首都圏近郊緑地保全法で70haが保全され、2011年には近郊緑地特別保全地区に指定されました。現在は神奈川県の管理下にあり、一部を所有している京浜急行も保全に賛成しています。

流れが合流するたびに変わる植生
年間約1500万円の保全資金は自力で稼ぐ

岸さんとスタッフの西池淳一さんのガイドで、ウグイスの鳴き声やキツツキが木をつつく音を聞きながら、浦の川に沿った約1400mのボードウォークを歩きました。一つの大きな流域には約30の大小の流れが入れ子状に交わっていて、大合流点を通るたびに岸さんが生態系について説明をしてくださいました。

「流れが合流するたびに、運ばれてくる水と土砂の量が2倍になって土が厚くなり、アスカイノデという常緑の巨大シダのゾーン、ハンノキの湿地林、ジャヤナギのゾーンと植生も変わっていきます。」

初夏になると一晩に1000匹近いホタルが乱舞する小川や、希少なサラサヤンマの繁殖地などを通りながら、参加者は植物や昆虫を見つけては西池さんに名前を尋ね、写真で記録。ぬかるみに何かの足跡を見つけるたびに立ち止まり、「これはアライグマ」、「こっちはタヌキ」、「ファミリーじゃないかな?」などと、カメラを向けていました。

途中、参加者から「保全資金確保のために、どんな事業をしていますか?」という質問が挙がり、岸さんが答える場面も。

「神奈川県知事、三浦市長、かながわトラストみどり財団代表と私の4者でパートナーシップ協定を結んでいますが、保全に必要な年間約1500万円の資金は自力で稼いでいます。そのうち300~400万円はかながわトラストみどり財団の事業を代行した交付金ですが、残りはイベントや物販、有償のガイド、あとは大きな企業4社の受託事業として森づくりや湿原再生、ハマカンゾウの保全を行ったり、助成金をいただいたりしてまかなっています。」

干潟には100種類以上の絶滅危惧種が生息
アカテガニが暮らしやすい森づくりも進行中

ここからは西池さんの案内で、100種類以上の絶滅危惧種を含むカニや貝などが数多く生息している干潟に向かいました。

「干潟ではチゴガニ・コメツキガニ・ヤマトオサガニの求愛ダンスが見られます。ただし、ここは保全区域に入っていないため、竹製の簡単な柵を立て、カニを踏みつけないよう、マナーを守って観察することを呼びかける看板を神奈川県に立ててもらっています。」

干潟には、春の陽気に誘われて出てきたチゴガニの姿が見られました。一帯は、宮沢賢治が「イギリス海岸」と名づけた北上川西岸にも似ていることから、「イギリス海岸」とも呼ばれているそうです。

最後に、イベントの時にだけ開放しているアカテガニ広場へ。5月頃にようやく姿を見せるというアカテガニは、まだ冬眠中でした。

「ここは小網代の森が整備され、一般開放される前に、かながわトラストみどり財団が買い上げた土地です。夏の大潮の時期に、山から海へ下りて幼生(ゾエア)を放つアカテガニを観察する拠点として利用されています。アカテガニの生態や保全活動、見学の注意点について説明を受けたあと、参加者は明るいうちから波打ち際で待機し、日没後に30分ほどかけて放仔するアカテガニを見守ります。ひと夏を海で過ごしたアカテガニは秋になると森へ戻ってきます。」

笹を刈ったり、瓦で隠れ家をつくったり、脱皮するための池をつくったり。アカテガニが暮らしやすい森づくりが現在進められているそうです。帰りは、小網代湾を眺めながら「シーボニア入口」のバス停まで歩き、京浜急行・三崎口駅で解散。源流に当たる「引橋」から森を抜けて海まで、まさに流域全体の自然を満喫した1日となりました。

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