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「未来につなぐふるさと基金」
生物多様性の大切さを伝える10団体が成果を発表
2018年度報告会・意見交換会

2019年3月7日、東京都港区のキヤノンマーケティングジャパン港南事業所にて、「未来につなぐふるさと基金」2018年度報告会・意見交換会を開催しました。活動の成果について共有し、今後の活動に役立てていただくために、プログラム1年目の5団体、2年目の5団体が活動の成果や課題を発表。それぞれの発表後には質疑応答の時間を設けました。後半は「生物多様性の主流化」に向けて何ができるかを考えるワークショップを開催。終了後には会場を移して懇親会を開き、参加者同士の親交を深めることができました。

開会のご挨拶

クリック募金は700万円、ウェブサイトは390万レビューを達成

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 CSR本部 CSR推進部 部長
早坂修一さん

キヤノンは1990年から、カートリッジの回収に取り組んできました。そして、2010年からこの資源循環のスキームと連動する形で、回収本数に応じた寄付を原資として活動しているのが、「未来につなぐふるさと基金」です。お陰様で、クリック募金も累計700万円を超えましたし、クリック募金を含むウェブサイトは390万以上のレビュー数となっています。よい活動を発信していくために、これからも皆様のご協力をよろしくお願いします。

審査委員長ご挨拶

多彩な活動のさらなる深掘りと横展開に期待

國學院大學経済学部・経済ネットワーキング学科 教授
古沢広祐さん

4年目を迎える「未来につなぐふるさと基金」ですが、北は北海道から南は宮古島まで多彩な活動が展開されています。基金の支援を通して、活動をより深く掘り下げると共に横展開し、次のステップに向かっていただけたらと思います。19年度も継続の5団体に加えて、新たに5団体をご支援することが決まりました。これから1年間、そしてOBとなってからも、さらなるご支援とご協力をお願いします。

2018年度の成果のご報告

生物多様性への理解・行動、生物多様性そのものにも変化

公益財団法人パブリックリソース財団
田口由紀絵さん

2018年度にご支援を受けた皆さんのプログラム実施回数は合計46回、参加者数は1086人、「My行動宣言」をした人の数は492人にのぼりました。また、アンケートの結果から、生物多様性に対する参加者の理解が深まり、その後の行動変化にもつながったことがわかりました。さらに「カヤネズミやアカハライモリの生息を確認」、「トンボの種数が増加し、生息範囲も広がった」といった、生物多様性そのものの変化も報告されました。

プログラム2年目終了団体によるプレゼンテーション

撮影した身近な自然を1冊のワークブックに

特定非営利活動法人もりねっと北海道
佐野愉架さん

旭川で「森を生かす活動」と「森と人をつなぐ活動」をしています。「身近な自然をカメラで撮影するワークショップ」を昨年は5回、今年は3回行いました。1年目は、ネームのある写真家を呼んだ回は人が集まりましたが、2、3回目には続きませんでした。結果として、自然にもカメラにも近くない人が集まり、「こういう人に来てもらいたい」とターゲットを絞って広報することの大切さを学びました。2年目の今年は入門編から一歩踏み込んだ内容にし、のべ33人が参加。撮影したものをワークブックにまとめ、後半には学校への配布を意識して「環境教育プログラム」のページを設けました。

田んぼにおける9つの生物多様性の指標群を視覚化

特定非営利活動法人田んぼ
岩渕成紀さん

私たちは「ふゆみずたんぼ」を提言していて、その活動は国連のGreen Citizens Projectの優良事例に選ばれました。「生物多様性の主流化」を目指して「にじゅうまるプロジェクト」に参加し、SDGsの「持続可能な農業で飢餓ゼロへ」という目標も意識しています。そこで私たちは田んぼにおける9つの生物多様性の指標群を考え、調査を実施。網を20回かけ、市民調査として誰でも参加できるようにトンボはトンボでくくり、外来種は数えないようにしました。その上で、2017年に国連から出された「ダッシュボードレポート」を田んぼに当てはめ、5つの「My行動宣言」がどれだけ実践できているか自己評価しました。そして今は、人の変化をとらえた「生物多様性」の認証マークの実現に向けて取り組んでいます。

「ビオトープ農原」効果でトンボやカエルの種数増加

特定非営利活動法人アサザ基金
君嶋耕さん

茨城県の霞ヶ浦を舞台として、分断化された社会の中で、自然や人とのつながりを取り戻して生み出していこうとするのがアサザプロジェクトです。1995年に始まりました。今や絶滅が危惧されている水草アサザは、そのシンボルです。2年にわたって、耕作放棄地を、生き物がいっぱいで、おいしい野菜もとれる「ビオトープ農原」に変えていくプロジェクトに取り組みました。昨年4月22日には、地元小学校の体験型学習事業と連携して、カボチャの種まきと古民家での昼食、写真教室を実施。55人が参加し、うち45人が子どもでした。2004年から継続している小学校での出前事業で広報したことも集客につながったと思います。「ビオトープ農原」の中にある池を起点にトンボやカエルが、農原全体で見られる様になりました。その種類も増えました。今後も、この活動を自主事業として継続していきます。

40年間手入れがされていない里山を市民と回復

特定非営利活動法人森のライフスタイル研究所
竹垣英信さん

森への無関心をなくすために、ごく普通の市民と企業による森づくりを進めています。今回は、特別緑地保全地区に指定されたものの、40年間手入れがされていなかった東京都八王子市上川地区の回復に取り組みました。間伐や里山整備、田植えや稲刈りなどのプログラムを5回実施。里山の魅力に気づくための写真教室も行いました。光が差し込むようになったことで生える草類の種類が増え、希少なカヤネズミやアカハライモリの生息も確認されました。リピーターを増やすには参加者の達成感が重要です。デリケートなゾーンはスタッフが管理し、環境の変化がわかりやすい場所を参加者に任せるなど、エンタメ性との両立が大切だと思います。

農作業する楽しさを知り、普段と違う視点で野鳥を撮影

特定非営利活動法人河北潟湖沼研究所
番匠尚子さん

石川県で1番大きな湖・河北潟を再生する活動を始めて25年目になります。食べられる草花探しや無農薬田んぼの田植えや稲刈り、写真教室などのプログラムを2018年は5回行い、計110人が参加。写真教室では野鳥の撮影時に配慮すべきことや、腹ばいなど普段とは違う視点で撮影するコツを野鳥の専門家に聞きました。私たちスタッフも普段から活動の際には全員がカメラを持ち、いい写真を撮ることを意識しています。参加者には、みんなで農作業する楽しさと多様な生き物の存在を実感してもらえたと思います。継続した参加者の獲得と資金調達、無農薬田んぼの雑草を抑える技術の確立、上流域との連携が今後の課題です。

プログラム1年目終了団体によるプレゼンテーション

子どもたちが地元の自然や食材の豊かさを実感

特定非営利活動法人霧多布湿原ナショナルトラスト
島﨑楽さん

海・湿原・森がコンパクトにまとまって生物が多様な北海道浜中町の霧多布湿原で、2000年から保全活動をしてきました。今回は、結成13年目を迎える「きりたっぷ子ども自然クラブ」で、カヌーに乗っての湿原探検や浜辺での乗馬体験、蝶やトガリネズミの観察会、森の中での写真教室、地元食材を使った料理教室など10回のプログラムを実施。浜中町の自然や食材の豊かさを子どもたちに伝えることができました。周辺市町村からの参加も増えています。小学校卒業後もボランティアとして参加し、当団体のスタッフになった子もいます。地域の方に講師になってもらうことで、この活動が町の誇りにもつながっています。

アカテガニの繁殖地・小網代の森を守る

特定非営利活動法人小網代野外活動調整会議
石川紫穂さん

三浦半島の小網代の森で浦の川流域全体を保全しています。5月には、森で暮らし、海でお産をするアカテガニの邪魔をするセイタカアワダチソウを除去し、7月には干潟で恋ダンスをするチゴガニを撮影。8月のアカテガニの放仔観察会は雨天で中止となりましたが、11月には瓦と落ち葉で冬眠するアカテガニの繁殖地を作りました。参加者は計151人。東京・横浜からの参加が多く、別の方を連れてきたり、来年の活動への参加を表明してくれた方もいました。高校生・大学生のインターンが活動を支えてくれていて、来年度は12人になります。来年度はアカテガニがもっと増え、カブトムシの繁殖も期待できそうです。

剥製を通して、ロードキルの実態を子どもたちに伝える

富士山アウトドアミュージアム
舟津宏昭さん

富士山を博物館、富士山を構成するすべてのものを博物資料ととらえて、森づくりやゴミ拾い、環境教育などを行っています。5年前からは、野生動物の交通事故(ロードキル)の実態調査にも取り組んでいて、24時間・365日の体制で目撃者に通報を呼びかけています。昨年11月3日のプログラムでは、車に轢かれたムササビとゴミによって傷ついたカモの剥製を見た後、ゴミ拾いとほうとう作り、子ども目線での一眼レフ撮影会を実施しました。親がロードキル通報の協力者になったり、その後もゴミ拾いに来てくれるようになった子もいました。富士山が好きな子を一人でも増やすことが私たちのミッションです。

海の生き物を観察し、生物多様性への理解を深める

海辺工房ひとで
野口なつきさん

2000年から静岡県で移動水族館や磯観察会、ビーチコーミング、海のクラフトなどに取り組んでいます。昨年は、専門家による駿河湾の生き物の話と魚の写真教室、ウミホタルの発光実験会とイラストレーターによる魚のスケッチ教室、海の生き物との触れ合い教室とビーチコーミングを実施。アンケート結果から、海の生き物や生物多様性への理解が深まったことがわかりました。参加を機に、自主的にゴミを拾うようになった小1の女の子もいます。普段海に行かない人の参加促進と、参加者の探究心に差がある場合の進め方が今後の課題です。

※この課題に、会場からは「興味を示す人には、その人のレベルに合った指導者が個別にどんどん情報を伝えるようにしてはどうでしょうか」というアドバイスが送られました。

海に関心が薄い島民に向けたプログラムで興味を喚起

特定非営利活動法人宮古島海の環境ネットワーク
春川京子さん

2012年から宮古島で自然環境を守るために、月に1度の海岸清掃、リーフチェックやゴミの調査などの海洋調査、マングローブやサンゴ礁・漂着ゴミに関する環境教育をしています。昨年は、豊かな自然が当たり前で海への関心が薄い島民に興味をもってもらうために、市民参加型のプログラムを実施。マングローブの写真教室やマングローブの生態を学ぶゲーム、海岸漂着ゴミの分類などをしました。楽しい体験を通して自然を守りたい気持ちを育み、活動への参加や自然に興味をもつきっかけを作ることができました。大人は集客が難しいので子どもへの教育を進め、子どもから発信する体制を作っていきたいと思います。

ワークショップ

団体の悩みや課題に、お互いがアドバイス

後半は、2つのグループに分かれて、自分の団体の悩みや課題を出し合い、お互いにアドバイスを送り合うワークショップを開催しました。出された意見は付箋に書いて模造紙に貼り出し、最後に全体で共有しました。

審査委員長の古沢広祐さんが進行を務めたグループでは「世代交代しづらい」、「環境教育でお金をもらうのは難しい」といった悩みが出され、「一人ひとりに夢を伝えて『あなたのこの力が必要なんです』と呼びかけることが重要なのではないか」という結論に至りました。

審査員の後藤ななさん(公益財団法人日本自然保護協会自然保護部)が進行を務めたグループでは「地元の人との連携・調整が難しい」、「年間を通して活動の収益を安定させたい」、「ミッションの共有・継承をどうするか」といった課題が出ました。これに対し、後藤さんからは「能登では、地元の人とのやり取りを通して活動に巻き込んでいった例がある。生物文化多様性という言葉がヒントになるかもしれない」というお話がありました。

感想

参加者からは「地域で事情は違っても同じ問題を抱えていることがわかってホッとしました」、「若い人に活動をつないでいく責任を負っていることを改めて実感しました」、「いろいろなヒントをいただき、帰ったら根っこの部分を団体内で話し合いたいと思いました」、「自分のこれからの生き方を考えさせられる刺激的な1日でした」との感想が聞かれ、充実した報告会となりました。

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